国際博物館新聞ロゴ

私のおススメする博物館



令和の時代の博物館「愛媛県立歴史博物館」

NPO法人ミュージアム研究会  清水 麻記

緑の中にたたずむ愛媛県立歴史博物館
緑の中にたたずむ愛媛県立歴史博物館

 愛媛県の大型県立博物館は、県庁所在地がある中予地方に美術館、東予地方に科学館、そして南予地方に歴史博物館と、県内に分散されている。観光客には不便なこともあるが、県民にとってはありがたく、我々のように家族連れで出掛けた時に雨が降って行くところに困った時など、こうした県の施設があることで救われることが多い。
 久しぶりに、西予市宇和町にある「愛媛県立歴史博物館」に立ち寄ってみた。常設展示の入り口に、万葉集と令和の展示コーナーがあった。 「初春の令月にして、気淑く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香りを薫らす」-初春のおめでたい月、空気も澄んで、風も和らぎ、梅も咲き誇り、蘭は袋の中の香りのように薫っている。庭には蝶が舞い、空を見上げれば雁が北へ帰って行く。空を天井と見立て、大地を座席とし、人々と膝を近づけて、盃を酌み交わし、楽しいひと時を持てることはなんと幸せなことだろう-という歌であるとの説明があった。
万葉集などというものは学生時代のテストに出題されたものの、その後の私の人生に関わってくるとは思ってもみなかった。しかし、移ろう季節の自然を美しいと思い、共に楽しみながら集うことを幸せだと思う万葉人の姿に私たちの姿を重ね、幸せな気持ちになった。こうした、ちょっとした展示コーナーで令和の元号の出典を知るという、新しい学びとの出会いの場を提供してくれた博物館の人々に感謝である。小さな展示コーナーは、畳一畳分ほどの空間ではあったが、過去から現在まで脈々と流れる悠久の歴史を感じさせてもくれた。
 新しい令和の時代―博物館はどんな役割で、どんな世界へ誘ってくれるのか― 日々、日常に追われる身としては、「ちょっとしたコーナーから博物館がつなげてくれる世界」に一層期待したい。博物館を通し、さまざまな人々が集い、美しいもの、面白いもの、楽しいものに出合い、それらと触れ合い、交わり合う中で、幸せな気持ちになれると嬉しい。

展示を見てもらう工夫-チケット売り場前の案内看板
展示を見てもらう工夫-チケット売り場前の案内看板

ちょっとした展示コーナー「令和と万葉集」
ちょっとした展示コーナー「令和と万葉集」



「佐賀県立博物館と佐賀県立美術館(SAGA Prefectural Museum and SAGA Prefectural Art Museum)」

NPO法人ミュージアム研究会  江藤 信一

佐賀県立博物館(手前)と佐賀県立博物館(奥)
佐賀県立博物館(手前)と佐賀県立博物館(奥)

 佐賀県佐賀市にあります「佐賀県立博物館」と「佐賀県立美術館」を紹介します。 ふたつのミュージアムは佐賀市の中心地にある佐賀城三の丸跡にあります。1970年に佐賀県立博物館が開館し、そのあと1983年に佐賀県立美術館が開館し、美術館の役割を移管するカタチで分けられたそうです。写真で見ても分かる通り、隣接して建てられており、ふたつは回廊によってつながっています。最近では見ない建物構造の博物館であり、美術館と一体的に運営されている点も面白いと感じました。
 博物館と美術館では、佐賀の自然史・歴史・工芸・民俗から佐賀にゆかりのある近現代の絵画・彫刻・書が集められています。またミュージアムのすぐ近くには佐賀城本丸歴史館があり、佐賀の文化が凝縮された場所になっています。

ふたつのミュージアムをつなぐ回廊
ふたつのミュージアムをつなぐ回廊

すぐ近くに佐賀城本丸歴史館があります
すぐ近くに佐賀城本丸歴史館があります



水族館の理想形 「アクアマリンふくしま」

海と博物館研究所 所長 高田 浩二

アクアマリンふくしま
アクアマリンふくしま

 冒頭から私事で恐縮だが、1976年、大分生態水族館(現、大分うみたまご)に入社、1988年に海の中道海洋生態科学館(マリンワールド海の中道)に転職した後、2016年まで水族館の現場に40年勤務してきた。さらにそこからは福山大学生命工学部海洋生物科学科で教鞭をとり、同大学の附属水族館を核に教育普及や展示開発の研究に携わり、2019年3月末まで奉職、同年春より福岡で「海と博物館研究所」を設立した。このような経験が積めたのは、ひとえに私に水族館という場が与えられてきたことが大きな要因である。従って、残された人生では、水族館や海、水族たちに恩を返すことが私の生きる意味や目標だろう。
 私は水族館の世界に飛び込んだ頃から、「水族館を博物館(教育施設)に」というスローガンを掲げ様々な活動を展開してきた。この「国際博物館の日新聞」へ幾度か投稿させていただけたことも、極めて重要でありがたい機会であった。そして今年の継続発刊に少しでも寄与できるのなら心から光栄に思う。
 さて前置きが長くなったが、このような仕事をしていると、よく「高田さんの一番のおススメの水族館はどこですか」と聞かれる。その時に私は迷わず「アクアマリンふくしま」と答えている。走攻守のバランスがよいスポーツ選手のように、この館ほど迷いなくすべてが揃っている水族館はわが国ではないと思うからだ。それは、水族館の施設規模や展示点数の大きさというよりも、展示内容や飼育技術の充実、国際的にも十分な質の研究、教育普及への高い眼差し、常に業界をリードする独創的な水族館としての在り様、それらを積極的に発信する姿勢、これらの質の高い活動を支えている豊富な人材などなど、いずれにおいてもわが国でこの水族館を上回る施設はない。昨年秋に第10回世界水族館会議がこの館をホストに開催されたのもうなずけることである。
 多様な水族館の在り方がある中で、大型の海洋動物やアイコンとなる人気動物がなくとも、私のようなプロからアマチュアまで多くの利用者を満足させる魅力にあふれていることは特筆すべきことだ。この館がオープンしたのは2000年なので、まもなく開館20周年を迎えるが、この間、あの東日本大震災とそれに関連した事故など、周辺地域も含めて大きな苦難を乗り越えながら、それにくじけずますます充実と発展を見せる「アクアマリンふくしま」には今後も目が離せない。
 この投稿が少しでもこの館の応援になるのであれば嬉しいしが、その様々な活動の詳細については、このページで知るよりもぜひとも皆さんが直接、この館と出会って感じていただきたい。次はあなたの訪問がアクアマリンふくしまを支えることを心より願っています。



世界は丸っと博物館

一般社団法人フリースクール愛媛  フリースクール「エルート」校長 西浦 慎介

 博物館っていう施設はなぜあるのでしょうか。
 わたしは、世界は丸っと博物館であるという教育理念でフリースクールの校長をしています。その理念とは、日常にあふれるさまざまな出来事を生徒たちと体験し、共有して、学習につなげることを意味しています。文章にすると、当然のことであえていうほどのことでも無いようですが、今回はちょっと考えてみたいと思います。まずは、博物館の概要について簡単にまとめたいと思います。数字の誤差はご了承くださいませ。
 博物館には、東京国立博物館をはじめとする総合博物館や科学博物館、歴史博物館、美術館、動物園、植物園、水族館、資料館、記念館などがあり、日本全国に約6,000件があります。博物館は、博物館法によって規定され、歴史や芸術、自然科学等に関する資料を収集し、保管し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用を行い、あわせて学芸員などがこれらに関する調査研究をすることを目的とする機関とあります。博物館は3つのカテゴリーに分類され、条件が厳しい順に、登録博物館が約900件、博物館相当施設が約400件、博物館類似施設が約4,700件存在します。ここで特筆すべきことは、博物館類似施設の4,700件中の4,500件は、博物館事業を実施する施設ではないが、よく似たことをやっているという施設であり、さらに統計上把握していない小さな施設もたくさんあるということです。また、博物館法が制定された1951年(昭和26年)では、今日のような多様性は無く、博物館総数はたったの200件だったようです。
 わたしが勤めるフリースクールは、不登校の状態にあるお子さんを対象にしています。そのご家庭との個別説明会を開催していく中で、わたしはあることに気付きました。ほんの20年ほど前では、不登校とは病気で学習に障害があり治療が必要だという認識が多かったのが、今ではとてもしっかりした将来の夢を持ち、学校という学習の場や制度に対して疑問を持っている子どもたちが多くなってきているということです。そして、その子どもたちの多くは芸術や自然科学、歴史などに対して興味をとても強く持ち、さまざまな体験がきっかけでのめり込み、一点集中で学習したり、趣味に興じています。なかには、人付き合いが苦手だったり、いじめなどが原因で不登校になり、世の中に対して不安と不満しかなく、寝てる時以外はずっと家でゲームをしている子どもたちもいますが、やはりその親御さんたちは、子どもたちにいろんなものを見て、体験してほしいと願っておられます。
 わたし自身、全国に点在する鉄道博物館が好きで2人の子どもたちとよく出掛けます。小さな個人経営のところや鉄道会社が自社でやってるところが特に大好きです。旅行先では、地元の雑誌やインターネット、フリーペーパーなどで資料館的なところを特に探して訪れます。いつその分野にすごい興味を持つかわかりません。わたしは今、家族で訪れた魚市場の一般開放朝市に強い衝撃を受けたのがきっかけで、深夜に地元の魚市場で働いております。魚市場での企画展示という博物館類似施設(?)としての重要性を改めて強く感じています。
 わたしは、自身の経験を踏まえ、スクールの生徒たちにさまざまな博物館に連れて行ったり、わたしが今まで訪れ吸収した博物館の内容を授業に取り入れています。そして、今まで生徒たちが、見向きもしなかった近くの森や川、海外の文化、先輩方の人生なども、立派な博物館であるかのように子どもたちに伝えています。
 博物館はすごい。楽しい博物館類似施設も本当にたくさんあります。統計外の施設も山盛りあるそうですよ。ぜひ探してみてはいかがでしょうか。ちなみに最近、うちの生徒で、不登校傾向で絵を描くのが大好きな高校生に、大学進学を勧め、美術館での学芸員の仕事を紹介したら、そんな世界があるのかと、はちゃめちゃ喜んで、作品を描き貯めています!やっぱり世界は丸っと博物館ですね。



「宇和島市立 歴史資料館」

松山市立北中学校 住田 勉

宇和島市立 歴史資料館

 江戸時代の初めに仙台の伊達政宗の庶長子の秀宗が宇和島城に入城しました。以来、伊予宇和島藩10万石として伊達家が外様大名として治めました。幕末8代藩主宗城は、四賢候として幕府の政治に参画しました。宗城は藩政改革を発展させ、高野長英・村田蔵六(大村益次郎)を招き、軍の近代化も進めました。このように辺境であった宇和島に進取の機運があったことは、司馬遼太郎の「花神」や「伊達の黒船」に描かれています。この宇和島市立歴史資料館は、最初は警察署として明治17年に建てられた擬洋風建築物ですが、幾多の変遷を経て宇和島に戻ってきたものです。2階は、明治期に活躍をした日本で最初の法律博士の穂積陳重や大津事件で活躍した児島惟謙、政治小説家の末広鉄腸等の資料が展示されています。資料館だけでなく、司馬遼太郎が愛した宇和島の風土や文化、人材を育んだ土壌を感じ取るためにぜひ、宇和島に足を運んでみてください。



「新屋島水族館」

岩尾 研二

新屋島水族館01

 新屋島水族館は、その前身が1969年に開館しているので、今年でちょうど50年の歴史ある水族館です。開館当時は「屋島山上水族館」という名称で、その名のとおり標高約300mの屋島(香川県高松市)の山上にあります。山の上にありながらも直径10m、深さ約4mのイルカプールでは、「イルカ劇ライブ」と銘打ったショーがおこなわれており、そこでのスタッフの熱演と観客を巻き込む演出は、イルカの演技が脇役に感じられるほど印象的です。「爆裂海洋戦隊ドルフィンジャ―」を見ましたが、ショーの後にスタッフ扮するドルフィンジャーたちが子供たちにサインを求められていました。イルカショーでこんな光景はなかなか見られないのではないでしょうか。そのほかにも、フンボルトペンギンが目の前を散歩したり、ゼニガタアザラシのショーがあったり、日本ではここと沖縄美ら海水族館だけでしか見られないアメリカマナティーが展示されていたり、こじんまりした中に見どころが満載です。施設に老朽化した箇所が見られるのは残念な点ですが、昨年の地元の市議会ではリニューアルする方針が示されたと聞きます。今後ますますユニークな展示を発展さてほしい水族館です。

新屋島水族館02



「松山市考古館」

NPO法人みんなダイスキ松山冒険遊び場 山本 良子

松山市考古館01

 私たち団体が活動の拠点としている松山総合公園プレーパークに登る山の階段の登り口辺りにあるのが松山市考古館です。松山市考古館周辺は街中とは思えない四季折々の景色を楽しめる場所です。6月初めに開花する大連古代ハスはピンクでとても可愛い花です。この蓮は、中国大連市内から出土した約1000年前の種子を発芽させたもので、平成8年に、松山市を中国大連市観光訪問団が訪れた際に、その種子を贈呈されたものだそうで、毎年、6月頃から花を咲かせています。蓮には花の咲く時間帯というのがあって、午前中の7時頃から11時頃が開花時期で、それ以降、花びらは閉じてしまって、再び、翌日午前中に咲くのだそうです。
 考古館内には松山周辺から出土した土器などが展示されています。小学生にもわかりやすいように展示も考えられていて、遊びながら学べる場所も用意されています。常設展示室の中に展示ケースを設置して、鎌倉時代~江戸時代の遺跡を紹介するコーナーができていました。南江戸近隣で見つかっている戦国時代の遺跡や、松山城の紹介をしています。 またケースの近くにはタッチパネル式の端末を設置し、展示では見ることのできない遺跡の情報を調べることができるようになりました。皆さんぜひ松山市考古館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

大連古代ハス02